AIに指示を出しても「なんとなく惜しい」答えしか返ってこない。同じ質問なのにChatGPTとClaudeで結果が違う。結局自分で書き直すほうが早い——そんな経験はないでしょうか。原因の大半はAIの性能不足ではなく、モデルの得意分野と指示の書き方のミスマッチです。この記事では、3つのモデルの実務的な使い分けと、再現性のあるプロンプトの型を、Python自動化の受託現場で実際に使っている手順として紹介します。

3つのモデルは「性能差」ではなく「性格差」で選ぶ

ベンチマークのスコアを比べても、実務での使い分けはほとんど決まりません。重要なのは、それぞれのモデルが「どう振る舞いがちか」という癖のほうです。

ChatGPTは発散と整形に強い傾向があります。アイデアを大量に出す、文章のトーンを変える、雑な入力からとりあえず形あるものを組み立てる、といった作業が速い。逆にいえば、指示が曖昧なときに「それらしく埋めてくる」性質があり、確認せずに使うと事実の粒度が甘い箇所が混ざります。

Claudeは長い文脈を保ったまま、指示の制約を守り続ける精度が高いモデルです。数千行のコードを読ませてリファクタ方針を出す、仕様書とコードの矛盾を洗い出す、書きかけの文章の論理の飛びを指摘する——こうした「長くて筋を追う必要がある作業」で差が出ます。安全側に振れる傾向があるため、断定的な結論を急がせるより、判断材料を並べさせる使い方が合います。

Geminiは検索・最新情報との接続と、画像やPDFを含むマルチモーダル入力の処理で強みがあります。公開情報の下調べ、スクリーンショットからの構造把握、大量の資料をまとめて投げて全体像を掴む作業に向きます。ただし取得した情報の出典は必ず自分で確認する前提で使うべきです。

実務での使い分けを一本の流れにすると、こうなります。Geminiで調べる → ChatGPTで案を広げて形にする → Claudeで筋を通して精度を上げる。1つのモデルで完結させようとするより、この3工程を分けたほうが総所要時間は短くなります。スクレイピング案件の要件整理でも、対象サイトの調査はGemini、取得項目の洗い出しと初期スクリプトはChatGPT、例外処理の設計レビューはClaude、という分担が定着しています。

成果を左右するプロンプトの5要素

どのモデルでも共通して効く型があります。これを埋めるだけで出力の質は安定します。

1. 役割——「あなたは〇〇です」は飾りではなく、語彙と前提知識の選択を絞る指示です。「Pythonエンジニア」より「レガシーコードの保守を担当する Python エンジニア」のほうが、出力される提案の現実味が変わります。

2. 文脈——なぜこれをやるのか、誰が読むのか、既に何を試したか。ここが抜けていると、AIは最も一般的な状況を仮定します。「初心者向けに」と書くだけでは足りず、「プログラミング経験ゼロの事務職の方が、明日から使う手順書として」まで書きます。

3. タスク——動詞を1つに絞ります。「分析して改善案も出して記事にまとめて」は3タスクです。分けて投げたほうが、それぞれの質が上がります。

4. 制約——文字数、形式、使ってよい前提、禁止事項。「専門用語は使わない」より「専門用語を使う場合は初出時に一文で説明を添える」のように、禁止ではなく行動で書くと守られやすくなります。

5. 出力形式——ここが最も費用対効果が高い要素です。「表形式で、列は『項目名・現状・改善案・想定工数』」と指定すれば、後工程での整形作業がまるごと消えます。プログラムに渡すならJSONのキー名まで指定します。

この5要素のうち、多くの人が省略しているのは2の文脈と5の出力形式です。逆に、1の役割設定だけを凝っても効果は限られます。

「良い例」を1つ見せるだけで精度が跳ね上がる

言葉で説明するより、望ましい出力を1つ見せるほうが速い場面が多くあります。いわゆる Few-shot の考え方ですが、実務では「完璧な1例」を用意するのがコツです。

例えば商品データを整形させる場合、「価格は半角数字のみ、カンマなし」と説明で伝えるより、こう書きます。

入力例:¥1,280(税込) → 出力例:1280

これだけで、税抜表記の混在や全角数字といった周辺のブレも同じ方針で処理されるようになります。説明文を積み重ねると条件同士が衝突しますが、具体例は解釈の余地が狭いためです。

もう一つ効くのが悪い例の提示です。「こういう出力は避けてほしい」という失敗例を1つ添えると、AIが陥りがちなパターンを回避できます。文章生成なら「『〜ではないでしょうか』で締めない」、コード生成なら「例外を握り潰す except: pass は使わない」といった形です。

そして、対話を1回で終わらせないこと。最初の出力に対して「この3番目の項目の根拠が弱い。他の可能性も検討して」と返す往復のほうが、初回プロンプトを磨き込むより効率的です。特にClaudeは前の指示を保持したまま修正を積み上げられるので、この往復が機能します。

繰り返す作業はプロンプトを「資産化」する

同じ種類の作業を週に何度もやっているなら、その場で書くのをやめて、テンプレートとして保存します。ここが「AIを使えている人」と「毎回ゼロから聞いている人」の差が最も大きく出るところです。

やり方は単純で、うまくいったプロンプトを可変部分だけ {{ }} で括ってファイルに残すだけです。

例:以下の議事録から、決定事項・未決事項・担当者付きのToDoを抽出してください。出力はMarkdownの3見出し構成。担当者が不明なものは「担当未定」と明記。議事録:{{text}}

10個ほど溜まった段階で、次のステップが見えてきます。API経由での自動化です。毎回ブラウザにコピペしているなら、そこはもうスクリプトにできる領域です。Pythonなら、テンプレートを読み込んで変数を差し替え、APIに投げて結果をスプレッドシートやSlackに流す、という一連の処理は数十行で書けます。

実際の受託案件でも、この流れが多いです。競合サイトの情報をスクレイピングで収集し、そのままAIに渡して要約・分類させ、日次でレポート化する。以前は担当者が3時間かけていた作業が、朝の通知を確認するだけになります。ポイントは、スクレイピングとAI処理を別々に考えず、「収集→判定→整形→通知」を1本のパイプラインとして設計することです。AIに任せるのは「判定」の部分だけで十分な場合が多く、そこを見極めるとコストも安定します。

注意点として、AIの出力をそのまま業務データとして信頼するパイプラインは危険です。出力形式をJSONで固定し、必須キーの欠落や型の不一致をコード側で検証する。この一手間を入れるかどうかで、運用に乗るかどうかが決まります。

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まとめ

プロンプト活用術の要点は3つです。第一に、モデルは性能で選ぶのではなく性格で選ぶ。調べるならGemini、広げるならChatGPT、筋を通すならClaude、という工程分担が実務では効きます。第二に、指示は「役割・文脈・タスク・制約・出力形式」の5要素で書く。特に文脈と出力形式は省略されがちですが、ここを埋めるだけで手戻りが激減します。第三に、うまくいったプロンプトは必ず保存し、繰り返すものはAPI経由で自動化する。プロンプトは使い捨ての質問ではなく、蓄積できる資産です。まずは今週いちばん多く使った指示を1つ、テンプレート化してみてください。そこが自動化の入口になります。

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